初恋の彼が、割と重度のフェチ持ちでした
「やっぱバレてた?」

「そりゃあな。正面から見てたし。でもそのやさしさはなずなのいいところだなと思って、とりあえず黙っといた」

「ありがと。柊ちゃんもそういうとこやさしいよね」

私たちはさっきと同じように手をつないで、駐車場に向かった。


走り出す車の中で、「どこか行きたい店ある?」と柊ちゃんに聞かれる。

「とくに希望はないから、一番近そうなとこ」

「女性ものの洋服店の場所とかよくわかんないから、とりあえず街の方出ればいい?」

「うん。街まで出たら適当に道案内する」

そうして近場の洋服店に到着すると、私は上着で再度ズボンの染みをしっかりと隠すようにして、車を降りる。


「買い物に付き合わせるの悪いから、車の中でちょっと待ってて。すぐ戻るから」

「ん? そう? じゃあそうしようかな」

私は車を降りて、ひとりお店の中へと入って行った。


さて、どんなパンツを買えばいいのか。まあ、サイズが合えばなんだっていいよね。急遽買うことになっただけだし、多少ダサくても安いものを……



……ううん。それは違うかも。



今日一日で改めて思ったよ。私と柊ちゃんの恋は、奇跡に近い。


小学生のころ、たった一年だけいっしょに過ごした中で惹かれあって、両想いになった。

だけど、転校で離ればなれになって、もう二度と会うことなんてないと思っていた。


だから、再会できただけでも奇跡なんだ。それなのに、お互いまた好きになって、付き合うことになって。本当に、奇跡みたいな恋だと思う。
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