初恋の彼が、割と重度のフェチ持ちでした
「覚えててくれたんだね」

「もちろん」

「私、この靴にする」

「もっとほかの靴見るか?」

「ううん、この靴がいい」

「じゃあ、ちょっと履いてみよう。そこ座って」

柊ちゃんは、私のうしろにある丸イスを指差してそう言う。

言われた通りに腰かけると、柊ちゃんは私の足もとに、選んでくれたばかりのチャンキーヒールを揃えて置いてくれる。



「サイズどう?」

「いい感じ」

「一応歩いてみた方がいいぜ」

私は靴を履いたまま数歩進んでみたけど、平気そうだった。


「やっぱり、この靴がいい」

丸イスに腰かけ直して、足もとで光沢を放つエナメルに心をときめかせていると、柊ちゃんも「そうか」とにっこりと笑った。


履き心地がよくて、デザインもかわいくて、なにより柊ちゃんが選んでプレゼントしてくれる。本当に幸せだ!



と、ウキウキした気分でいると、突然、柊ちゃんがすっとその場に膝をついて、私の右足に触れる。


柊ちゃん? と、口にするよりも先にーー


柊ちゃんは、私の右足に、ちゅっと、キスをした……。



「え、えっ⁉︎」

そのまま柊ちゃんの舌が私のふくらはぎをツ……とつたい、その感触に、思わずビク、と体を反応させてしまう。けど。


「しゅ、柊ちゃん! こんなところで!」

「はっ」

柊ちゃんは慌てた様子で立ち上がる。どうやら、無意識だったらしい。フェチ、恐るべし……。
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