初恋の彼が、割と重度のフェチ持ちでした
「ごめん、ほんとごめん」

「大丈夫だよ、誰も見てなかったと思うし」

「申しわけない……。俺、なんでこうなんだろ……。急にガマンできなくなって、理性飛んで、ああいうことしちゃったりする……」

「私は構わないけど、もしかして……仕事でかかわったモデルさんの足をいきなり舐めたり……」

「それはない! さすがに好きな子だけだよ。しかも、ここまで本格的に理性効かなくなるのはなずなが初めて。まあ、こんなこと言われてもうれしくないだろうけど……」

……うれしいよ、と。私は目の前にいる柊ちゃんにすら聞こえないくらいの小さな声で、呟くようにそう言った。


柊ちゃんの行動にはたしかに驚かされるけど……でも、前みたいな不安はもうない。奇跡みたいなこの恋を大事にしたい。だから、柊ちゃんの全部を受け止めたいって、今なら純粋にそう思える。
それに、どんな行動でも、それが“私だけ”というのは、とてもうれしい。



柊ちゃんは、さっそくその靴を買ってくれた。店員さんにお願いしてその場で履けるようにしてもらって、私と柊ちゃんはいっしょに店を出た。


「夕食……にはちょっと早いかな? どこ行こうか?」

手をつないで駐車場に向かって歩きながら柊ちゃんがそう聞いてくれる。



「……歩きたいな」

「え?」

「素敵な靴を選んでもらったから、この靴で少し歩きたい。ダメかな?」

私がそう言うと、柊ちゃんは「ダメなわけないだろ」と答えてくれ、私たちは方向転換し、少しの間、街を歩いてみることにした。
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