初恋の彼が、割と重度のフェチ持ちでした
新しい靴を履くと、気分が楽しくなる。となりに柊ちゃんがいて、その柊ちゃんが選んでくれた靴なのだから、なおさらだ。

身も心も軽くて、幸せだった。



「仕事柄、その人に合った靴を選ぶことってたくさんあるけど、好きな子に靴を選んであげて、その子がそれを履いてくれるのって、こんなに幸せなんだな」

突然、柊ちゃんがそんなことを言った。
柊ちゃん、私も幸せだよ。

それに……『こんなに幸せなんだな』って、まるで初めて気づいたかのように言ったってことは、柊ちゃんが靴をプレゼントした女性は私だけ?

それはわからないけど……もしそうだとしたら、私はどれだけ幸せ者だ。




しばらくして、私たちは車へ戻った。

「そろそろ飯かな? なずな、なに食いたい?」

シートベルトを締めながら、柊ちゃんが私に聞いてくれる。


なにが食べたい、って言うべきだったのに、私は。



「……ふたりになりたい」

「え?」

「……ダメかな?」


……私は今朝、柊ちゃんと待ち合わせした時、まだ拗ねていて自分から彼と距離を置いていた。

だけど今日をいっしょに過ごすうちに、彼のやさしさに改めて触れて、前よりも彼のことが好きになった。

自分で作ってしまった距離を、今度は自分から詰めたいって、そう思った。




柊ちゃんは車を走らせてくれた。夕食のためのお店に向かってーーではなくて、柊ちゃんの家に向かって。
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