初恋の彼が、割と重度のフェチ持ちでした
五分ほど歩いて、目的の居酒屋に到着する。

入口のところで、私はまた心臓がドキドキと高鳴って緊張してしまうのだけど、明里ちゃんにバレないように必死に平静を装った。


店員さんに案内してもらったお座敷の襖をガラッと思いきり開ける明里ちゃんのうしろで、私はひそかに呼吸を整えた。


「お~! 明里、なずな、久しぶり~!」

部屋に入るとタクヤくんが、昔から変わらない少し高くてテンションの高い声で私たちを迎えてくれる。


そして……。


(……柊ちゃん……!)

タクヤくんのとなりにいたのは、間違いなく柊ちゃんだった。


十八年ぶりに会った、柊ちゃん。だけど、ひと目で柊ちゃんだってわかった。顔は昔と変わらない……いや、ずっとずっとかっこよくなっていた。


どうしよう。

柊ちゃんと会ったからといってどうってことはないって思っていたはずなのに、なんかすごいドキドキしてきた……!
私って単純? でも、うるさい鼓動を抑えられそうにない……。


いや、落ち着いて私。さっきも思ったけど、柊ちゃんが私のことを覚えている保証なんてどこにもないよ。あんまり浮かれてると、忘れられていた時にショックが大きいかもしれない。


そんなことを思っていたけれど、タクヤくんに促されて、明里ちゃんはタクヤくんのとなり、そして私は……柊ちゃんのとなりに座ることになってしまった。


どうしようどうしよう……! と、うれしいドキドキと不安なドキドキと焦りのドキドキが入り混じる。
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