初恋の彼が、割と重度のフェチ持ちでした
すると、


「……転校した日に渡した手紙に、『好き』って書いてあったの、覚えてる?」


うつむいたままの私に、柊ちゃんがそう尋ねる。
……驚いた。柊ちゃんからそんな話が出るなんて。


私はゆっくり顔を上げて、柊ちゃんと視線を合わせた。


「……もちろん、覚えてるよ。柊ちゃんがいなくなってすごく悲しかったけど、柊ちゃんも私のこと好きだったって知れたのはすごくうれしかったもの」

「そっか」

「……柊ちゃんは……私が告白したの、覚えてる?」

「当たり前だろ。好きな女の子から告白してもらったんだから」


すると柊ちゃんは、私の左手をそっとつかんで、目線の高さまで上げた。そして。


「……指輪してないってことは、結婚してないんだよな?」

「え、え……うん」

「彼氏は?」

「い、いないよ」

「そう」

「……柊ちゃんは?」

「いないよ」


……なんとなく、お互いに見つめあう。無言が続いて、でもなぜか目がそらせない。


……その時。




「なずなーっ、飲んでんのーっ⁉︎」

「柊一はこっち‼︎ お前と話したがってるやついっぱいいるんだぞ‼︎」


……いつの間にやら完全に酔っ払った明里ちゃんとタクヤくんが絡んできた。


私はそのまま明里ちゃんの絡み酒に付き合うことになり、柊ちゃんはタクヤくんに連れられて、何人かのグループの輪の中に入っていってしまった。
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