ズボラ女が恋する瞬間
憂鬱な雲行き
隣に座る美緒は、あたしとは裏腹にルンルンなご様子だ。


「楽しそうだね」

「楽しまなきゃ損でしょ!タダで旅行出来るんだよ?!」


そうですか。

それは、良かったわね。

あたしはお金を取られるより、時間を取られる方が嫌なんだけど。

しかも寄りに寄って、なんで今年はここなの?

新幹線を降り、盛大なため息が溢れる。

別に、この街が悪いわけじゃない。

ただ、この街には彼がいる。

ここは彼が会社から転勤を命じられた街で、引っ越しをしていなければ、彼自身もこの街に住んでいる。

今日は土曜日で、特別な仕事が無ければ、彼も休みだろう。

会う可能性は低いにしろ、彼と同じ街にいるというだけで落ち着かない。

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