ズボラ女が恋する瞬間
「なんですか?」

「いや、何でも。じゃ、買いに行くか」


そう言い、あたしの返事も聞かずに歩き出す。


「三浦さんも飲みます?」

「あぁ」

「今度はあたしが奢りますよ」


さっき、奢ってもらったし。


「いいよ。お前、女なんだから、黙って男に奢られてろよ」

「そこ、男とか女とか関係あります?そういうこと言う人が居るから、男女格差が無くならないんですよ」

「なんだよ、それ」

「あたしは男だろうが女だろうが、対等で在りたいんです。だから、さっき奢ってもらったんで、今度はあたしが払います」


そう言い、あたしは売店へと走る。


「ホント、変な女」


あたしの後ろ姿を見ながら、三浦が溢した言葉はあたしの耳には入らなかった。

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