ズボラ女が恋する瞬間
21時と言っても、外はまだ賑やかだ。

人通りも、車通りも多い。

前までは、それが煩わしかった。

だけど、今は逆にそれに救われている。

大丈夫、何もない。

今までだって、特に何かあったわけじゃない。

ただ、手紙が入れてあっただけの話だ。

なんて、自分のことを勇気づけた。


「おい!」


え?

今、声がしたような?

ま、まさかね?

こんなに人が居るんだから、あたしに向かって来た声じゃない。

そう言い訳なんかしてみたが、心の中では恐怖心が大きくなるばかり。

自然と足は速くなり、体は変な緊張感に襲われる。


「おい!って」


その言葉が耳に届くと同時に、誰かに腕を掴まれた。

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