ズボラ女が恋する瞬間
「お前なぁ」

「何ですか?」

「何でもねぇよ。言う気も失せた」


何それ?

実は図星で、言い返す言葉もないんじゃないの?

そうこうしているうちに、自分のマンションが見えて来る。

もう少しで、家に帰れる。

三浦のおかげと言うのは癪だが、いつの間にか恐怖心は消えていた。


「ありがとうございました」


頼んではいないけど。

あたしは、頭を下げる。

そして、あたしはマンションに入ろうとする。


「ちょっと待った」


そんなあたしのことを、三浦が引き止める。


「何ですか?」


あたしの言葉が先か、三浦があたしの腕を掴むのが先だったかはわからない。

三浦はあたしの腕を引き、自分の方へと引き寄せた。

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