君はヒロイン
それは突然の訃報だった。

夕飯を家族揃って食べている時間に、電話が鳴る。

「もしもし」

お母さんの電話をよそに、僕はヒーロー番組に熱中しながらご飯を食べていた。

「いっけー!」

「那智、お母さん電話してるから声のボリューム落としなさい」

「お父さんっ僕ね!」

お父さんの言葉を遮るように僕は白熱する。

「絶対ヒーローみたいに強くなるよ!」

「うるさいよお兄ちゃん、聞こえないー」

小2の妹、成実がむっとする。

「えっ……?みねちゃん、が……?」

ふとお母さんの声に振り向く僕は、すぐに違和感を察知した。

「分かりました…すぐ向かいますね」

ガチャン、と電話を切るお母さんはすぐにお父さんに駆けよる。

「どしたのお母さん」

僕は成実ときょとんとした。

お父さんに耳打ちするお母さん。

「……えっ」

お父さんが小さく反応する。

そしてお母さんはすぐに上着を羽織りバタバタと玄関を出て行った。

「?…お母さんどこいったの?」

成実が首をかしげる。

「……那智。成実」

「なに?」

「ご飯食べ終わったらお父さんの話を聞いてくれ」

お父さんの顔は深刻そのもので、僕は驚きを隠せない。

「……」

僕も成実も伝わってくるピリピリした空気に、思わず目を見合わせ、ご飯を咽に流す。

沈黙と化した夕飯の時間。

まるで、最後の晩餐のように。
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