君はヒロイン
ー「那智、那智は私が守るからな、なにがあってもな!」

夏の日差しが強い真昼、近くのコンビニでアイスを食べるみねと僕。

「……うん」

「どしたの、浮かれない顔。私のいない間にまたあいつらに追いかけられた?」

「ううん、なんか、悲しいんだ」

「?なにが?」

蝉が鳴き、照りつける暑さ。

道路は蜃気楼に揺れている。

「悲しい、夢を見たんだ」

那智は俯いたまま。

「そっか」

みねはふと遠く高い青空を見る。

「…私、待ってるからね」

「え?」

みねの後ろ姿に胸が高鳴る。

「約束したでしょ?むかつく奴を倒すだけが正しいのか、那智の答えは決まってる?」

「……僕は」

ー「やっぱ倒すのが正義……ん?」

目を開く。

静な部屋には、カーテンから漏れる朝日。

「あつぅ……夢…?」

部屋は僕しかおらず、体を起こす。

視線の先には温度計が28度を差している。

「あれ、みんなどこ?」

眠気眼で立ち上がりドアを開ける。

リビングには朝ごはんが1食分置いてあり、涼しいクーラーの風を感じる。

テレビの前のソファに成実はいた。

「あれ、成実、お父さんとお母さんは?」

「お兄ちゃんとテレビ見てろって。あ、ご飯はそれね」

昨日ダビングしたヒーローの戦いが画面には映し出されていた。

「…うん」

頭の中で混乱が続く。

さっきの夢、みねがいた。

僕はまだ、答えを伝えていない。

きっと全部夢だ、みねが死ぬなんてありえない、みねに伝えにいかなきゃ!

朝ごはんを胃に流し込み、慌てて着替えカバンを持って玄関に向かう。

「お兄ちゃん?!」

僕の行動にびっくりした成実は慌てて僕を引き止める。

「だめだよ!まだ犯人捕まってないんだよ!」

「犯人って?なんか勘違いしてるんだよみんな」

僕はみねに会うのをわくわくしながら玄関を飛び出た。

「お兄ちゃん!!!」

みねは、死んでなんかない。

僕はみねに約束してるから、答えを伝えたいから!

これが僕なりの答えだよって、みねはどう思うか分からないけど……。

すぐ行くよ、みね、待っててね!
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