小さな花 〜あなたを愛した幸せな時間〜
今でも鮮明にくっきりと思い出せる───。


その一字一句を。


見たとたんに消去したそのメールを。



《結婚したい女がいる》

《もうメールしないで》



「ナナッ‥お前さぁっ!‥」

話を聞き終えるとサトルは頭をくしゃくしゃと掻き乱すとうなだれる。


「‥お前‥ホントばか‥!」


暗い中でもサトルの綺麗な髪がサラサラと流れるのがわかった。


「ほんとに‥こんな話してごめんね‥」


「‥‥」


サトルはなにも言わない。

「ほんとに‥ごめ──」

「───俺じゃダメなん?」

「‥え‥っ?」


「そんな男なんか忘れて‥俺にしろよ‥!!」



サトルは私を後ろから包み込むように抱きしめた。

サトル‥

サトル‥


「‥でも‥私‥」


なんて答えたらいいの‥?
また繰り返す?

また裏切ってしまわない‥?


ナナ‥どうなの!?


「俺のそばにいて‥?大事にするから‥」


サトルの声‥
こんなに切ない音だった‥?

サトル‥
サトルと‥

もう一度‥ううん

初めから‥



「‥うん‥」


私はサトルと、
向き合うんだ‥!


もう‥
絶対‥


裏切らないよ‥





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