小さな花 〜あなたを愛した幸せな時間〜
かわいいチカの明るい声の後ろにまたも無表情なお母さんがいた。


───これはかなり怒ってるな…。



「おかえり。」


冷ややかな声で言われると逃げるように部屋に駆け上がった。



ばたん。


ドアを閉めるとベッドに倒れこむ。


また階下からチカの楽しそうな声が聞こえてくる。


「今日ね、今日ね、」


無邪気な声についイライラする。

お母さんとスーパーに行ってきたんだろうな。

手をつないで。

ときどき歌を歌ったりして。

レジ袋片方ずつお母さんと持って帰ってきたのかな‥‥。

───私だって、小さい頃、お母さんとお買い物行きたかった…。

でも、いつも1人。

毎日暗い部屋で、お母さんの帰りを待ってたんだよ…?



「‥‥」



マユは今頃タケシと何してるかな?

DVDでも見てるかな?

それとも学校の話かな?



淋しくなり始めるとキリがなくて、


私は暗闇に落ちるんだ───。







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