小さな花 〜あなたを愛した幸せな時間〜
救急車はすぐにやってくると思ったが心情的にはとても遅く感じるものだ。


救急車へとナナコに付き添い乗り込み病院まで付いていく。

病院についたナナコは幸い大事に至らずその日のうちに帰れることになった。


「ためらい傷といいますか…そんなに深い傷ではありません。しかし目を離さないようにしてください。」

ナナコを診てくれた医者はそう言って口を真一文字に結んだ。


それから程なくナナコの両親が駆けつけた。
ナナコはしばらくの間、実家に戻ることになった。

なにより驚いたのはナナコの両親が、ナナコが恋人を亡くしたということを知らなかったことだった。


俺はナナコを両親に託すと地元を後にした。




ようやくアパートに着いたのは真夜中。

時刻はすでに0時を過ぎてしまっていた…。


……ナナ。


約束を忘れていたわけではない。

でも…

連絡を入れるだけの心の余裕は…なかった…。






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