小さな花 〜あなたを愛した幸せな時間〜
そんなつもりはモチロンない。

会うつもりも初めからなかった。

ただ…

ただ、無事家に帰っているか心配だった。


その帰り道ストーカーみたいな自分にホント笑えた。

―――ひとりで何やってんだ…俺。


部屋に戻っても何もやる気が起きず、かといって眠ることもできない。


ナナのあの時のあのカオが…頭の中から消えねぇんだよ。

あの傷ついた瞳が…姿が…

でも…


やっぱり俺はどうしてやることも出来ねぇんだ。

あの時追いかけなかった俺に、もうしてやれることはない。

走り出したナナをただ見送った時、俺の答えは決まってた。

追いかけようと思えば追いかけることは出来たはずだ。
ナナコの腕を振り払い、「結婚は出来ない!」そう叫ぶことだって出来た。

でもしなかった。



そして、
それをナナもわかっているだろう。
追いかけてこない俺に答えを見い出しただろう。


―――ナナは俺を思い出にする。



そうしてほしい。


ナナには幸せになって欲しいから。


本当は俺が幸せにしてやりたかったけれど……。




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