小さな花 〜あなたを愛した幸せな時間〜
12月もあとわずか。

街にはジングルベルの音楽が溢れ人々は幸せそうな笑顔を浮かべる。

俺はその手に入るはずだった笑顔に未練たらしく思いを募らせていた。

欲しかったナナの笑顔。
そして隣で笑うナナを見て笑う俺…。


でも今の俺にはクリスマスなんて必要ない。
クリスチャンでもない。


今日はクリスマス。
でも俺にとってはただの月曜日。


仕事を終えフラフラと歩く商店街はキラキラと輝くイルミネーションに囲まれている。


会いてぇな…ナナに…。
見せてぇよ…このイルミネーション。


―――サンタがいるなら俺にナナの笑顔を見せてくれよ。

ロマンチストな俺はそんなことをひとり思い、そして呆れ笑った。

「ははっ…!」

ひとりで笑う俺をすれ違うカップルがいぶかしげに見ていた。
そりゃそうだ。


クリスマスイブの夜にひとりでうろつくニッカポッカの男。
…怪しいよな。


今日はナナコが家に来ているはずだ。
昨日の夜、メールがあった。

【明日ハルトくんの部屋でパーティしようねッ!ごちそう作って待ってるね!】

…ちなみに同居はとりあえず免れたもののナナコにしっかり部屋の合鍵を持たれている。


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