小さな花 〜あなたを愛した幸せな時間〜
「…カ…カレシくらいいるよっ!」


私はぎこちなく答えた。


「ホッ…ホントかッ!?」


焦るオトウサン。

そして自分も歯ブラシを手に取るとブツブツと何か独り言を呟きながら歯みがき粉を手に取る…と思いきや…。

え?

それチューブ入りのワックスだけど…?
それを歯ブラシに……


「あ〜〜〜ッ!!オトウサンッ!それ違うッ!!」


私は思わず声を上げた。


「…お?…あっ!」

自分の手元を確認して驚くオトウサン。


「あはははは!!」


いつの間にか私はごく普通に笑っていた。


「こりゃしまったな…アハハ!お父さんもナナと同じだなぁ!」

「オトウサン、私より悪いし!ドジ過ぎっ!」

「そうか?そうだな!お前のドジはお母さん譲りかと思ってたけどお父さん譲りだったんだなぁ〜!ハハハ!」


目を細めて笑うオトウサンの目尻に無数のシワが刻まれていた。
私は正面から向き合ってオトウサンの顔を何年ぶりに見ただろう…?
このシワはあの頃からあったのかな…?



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