小さな花 〜あなたを愛した幸せな時間〜
―――どうしてハルトじゃ、ないんだろう…。



…私はそう思ったんだ。

あんなに愛してくれるサトルを前に。
抱かれながら他の男の人を想って泣いた…。

…サイテーな女なんだ…。


止めどなく溢れる涙。



なんで今なの…?

なんで今日なの…?



―――私だって…

私だってハルトが好きだよ…。


ずっと鍵をかけていた心。
もうあけることもないと思っていた心のその鍵を、私はもう手にしてしまった…。

あとはこの鍵を差し込み、回すだけ…。



「私……」



いいのかな…?
私、この心を解き放って…。



「ナナ…。俺、もう後悔したくないんだ!」



「………!」



“後悔したくない”―――。

サトルの顔がよぎった。

サトルも同じことを言ってたよね…。



同じように、後悔したくない…と…。

ハルトもサトルも、同じように…。




「ごめんね…私…ごめんなさい…っ!」



私はハルトの腕をすり抜け、走り出した。





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