小さな花 〜あなたを愛した幸せな時間〜
「…えっ!?」


うつむいていた顔を上げるとサトルの寂しそうな顔がそこにはあった。


「……俺、見たんだ…さっき。」

サトルは私から目をそらした。

「ナナと…男が…ツリーの前で……」


「………!」


あのイルミネーションのツリーの下、ハルトに抱き締められた。
それを……見ていたの……!?


「…サトル…あれは…」

「付き合うんだろ!?」

「…違…っ」

サトルは私に話すだけの時間をくれず次々と言葉をぶつける。

「付き合えよ!よかったじゃん!!…幸せになれよっ!」

「…サトル…ちが…」

「もういいっ!!いいから!もう…」


辛そうな表情を飲み込むように、サトルは目を閉じた。

そして、目をあけたサトルはもう笑っていた。
いつものサトルみたいに見えた。

そんなはずないのに…。

最後まで優しくて、私のために笑ってた…。



「ゴメン。もう戻る。」


サトルは私に背を向けた。


「サトル…」


もうハルトとのことをいくら言い訳しても何も変わらないんだと思った。
ハルトと付き合うつもりはなくても、サトルと別れることに変わりはない。

それなら、もうこれ以上……。


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