小さな花 〜あなたを愛した幸せな時間〜
「…ホテルにいた…。」


「わかった。今から行くから!待ってて!」


ハルトは電話を切るとすぐにホテルに戻ってきた。
15分くらいだっただろうか…?



「ハルトっ!」



私が駆け寄るとハルトは静かに目を反らした。

…なんで…?

なんで、目を反らすの…?

ハルトはさらに残酷な言葉を続けた。


「ゴメン。ナナコ、マジで妊娠してた…。」


体の中の血が逆流したみたいだった。


「…母子手帳、っての?それも見たし……赤ちゃんの写真も……。」


「………」


声が、出ない。


「俺…殺せねぇよ…。」


「………」


そう言うと思ってた…。


「ゴメン、ナナ…ホントにゴメン…。」


「………」


「なんか言って?怒ってもいい。ナナ…頼む、なんか言って……!」


「………」


そんなこと言われたって…。
出ないんだよ…。
声が。
どうしても、出ないんだよ…。


「俺…ナナのこと、好きだよ。心から、お前だけ。」



< 312 / 416 >

この作品をシェア

pagetop