小さな花 〜あなたを愛した幸せな時間〜
ほんの…

ほんの数時間前まではハルトの腕のなか永遠の幸せを手に入れたような、そんな気持ちだった。


この右手の薬指の指輪も…。

こんな私たちの結末を知っていたのかな…。

この指輪は右手の薬指にしかはめられない、と…。

左手の薬指の指輪にはなれないのだ、と…。


まるで、
そう知っていたかのようだね…。


なんて、皮肉なんだろう…。


絶頂の幸せのあとに、
こんな絶望の悲しみがあるなんて…。


人生って、こんなもの?

幸せなんて、続かないの…?



私はゆっくりと右手の指輪をはずした。



バッグの中からケースを取り出すと、そっと優しくその指輪を寝かせた。



また、

あなたをこの指にする日が来たらいいのに…。


無理だって知っていても、
願わずにはいられないよ…。



ねぇ、ハルト…。



サヨナラ…ハルト…。




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