小さな花 〜あなたを愛した幸せな時間〜
―――この子がハルトの赤ちゃんだったら……。


…もちろん、産みたい。


ハルトに連絡して相談もしたかもしれない。


……でも。


―――ヨースケの赤ちゃんだったら…?


あんなふうに無理矢理、私が寝ている間に起こったことで出来た子だったら…?


―――考えたくない……。


私はまだ命の本当の尊さを知らない。

目先のことだけが頭にぐるぐると回り、恐怖につつまれる。


怖い…


怖い……



「…やだぁーーーーーー!!」



恐怖に耐えられず声でかき消そうとする。

でも消えるはずはなくて。

変わることも、ない。



「ナナ!!大丈夫!落ち着いて!!」


マユは抱き締める腕にさらに力を込める。


「大丈夫だよ…!大丈夫、大丈夫…」


マユはそう繰り返した。

――大丈夫…

大丈夫なわけなんてないって2人とも頭ではわかってた。


でもそのマユの言葉に少しだけ心が軽くなった。


落ち着きを取り戻すのを待って、マユがぽつんと言った。


「…ハルトさんて…避妊してた…?」




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