管理人は今日も憂鬱(イケメン上司と幽霊住人の皆さん)
不器用なんです
「ヘルプお願いしますっ!!」
派遣先の工場。
ライン作業であたふたする園絢(ソノ アヤ)。
ライン作業というのは、ベルトコンベア状の作業台で、1人3つほどの工程をそれぞれ受け持つ。
そうして1つずつ部品を付けていき、ひとつの製品の土台を作る。
そこまで仕上げたら別のラインでまた基盤を付けたりコードを引いたりボタンを付けたり。
そして完成する。
出来上がったらテストして誤作動しなければ商品として店舗に出荷される。
サポート役と運搬担当の派遣社員の男性も数名いた。
ヘルプを頼むと来てくれるが基本一人でしないといけない。
が、手が遅いので、いつも助けてもらわないと追い付かない絢。
ラインに入って半年になるが、元もと不器用で足手まといになっていた。
自覚はあったが辞めるわけにもいかず、頑張って慣れるしかなかった。
地方から近畿に出てきて、転職すること3回目。
楽そうとも思わなかったが、
接客が苦手な絢は、フリーペーパーの冊子で見た工場の派遣の条件に惹かれて入社した。
ワンルームだし、光熱費だけだし。と。
が、いざ入ってみると、普通のマンションにまとめて入れられていて、まあ中身は女子寮だ。
安いながらも家賃も取られ、単価自体は高いが、仕事の少ない時期は早上がりなどもある。
それでもないときは長期休暇を取らされる。長い目で見ると給料も実は知れていた。
帰るときもまとめて送迎バス。
寄り道する時間もお金もない。必要最低限の食費のみ確保できるくらいだ。
お酒や煙草、娯楽だのは、主婦の特権で、元もと住み家があって通いの人にはもってこいの高額お小遣いだ。
そういう人も限られてはいたが、もちろんいた。