管理人は今日も憂鬱(イケメン上司と幽霊住人の皆さん)
夕方、帰ろうとドアを開け通路に出たときだった。
見たこともない名前の引っ越し業者の小さなトラックが、外の駐車場に止まっていた。
今来たばかりのようだ。
業者らしい男1人と車を降りて、ふと見上げた顔に見覚えがあった。
「絢ちゃん??」
「……慶一郎さん??」
ドアを閉めようと出ていた蒼真と男の目が合った。
「……誰…?」
怪訝な顔で、慶一郎と呼ばれた男に睨まれる。
「あっ、前の会社の取引先の人で、南科慶一郎(ナシナ ケイイチロウ)さんです」
慌てて蒼真に紹介すると、階段を降りた絢。
蒼真を追い出すことしか頭になかったが、知らずに新しく入る可能性もあるのだと。
そして、鍵を手にした以上は内見も状態も、把握しておかなくてはいけない。