管理人は今日も憂鬱(イケメン上司と幽霊住人の皆さん)


「…本当に、何もないの??蒼真さんとは」


食事もろくに味わえないまま、ファミレスを出た。


引っ越しもあり、安いとはいえ家賃もありでお互いあまり余裕もなかった。


気を使わせるのも嫌だった。


「な、何も!何もないですよ!!」


「じゃあ、今日、泊まってってよ」


「えっ!?」


「嫌なの…??」


「いや、嫌とかそういうことでは。明日もありますし」


「祝日だよ」


体裁よくいえば、基本土日祝休みだ。


「じゃあ何」


家主とはいえ、自らが幽霊ハイツに泊まるのは。


この際正直に話すべきか。


悩んでいるうちにハイツに着いてしまった。


と、


南科が絢の顎を上げ、顔を近づけた。


唇が、重なった。


そして顔が離れた視線の先に、蒼真の姿が見えた。


薄明かりの点いた通路で、コンビニらしい小さなビニール袋を片手に、部屋の鍵を開けようとしていた。


そこにいることをわかっていて、わざと見せつけたようにも感じた。


「好きだよ、絢」


ずきん、とした。


どうした私…??


「や、やっぱり、帰りますね」


「帰さないよ」


強い力で腕を掴まれた。



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