管理人は今日も憂鬱(イケメン上司と幽霊住人の皆さん)


振りほどいて帰るのもおかしい。


とりあえず説明しようと部屋に入った絢。


「…あの、ですね」


何から話せば、と口を開いたが、


「コーヒー、飲む?」


「あっ、はい」


思い切って南科を見た。


「幽霊って、信じます??」


「この前も、言ってたよね」


「その、赤ん坊とか、お母さんとか、工場の男の人、幽霊なんです」


「まさか」


何を言い出すのかと笑いだした南科。


「ですから、南科さんにも出ていってほしいんです」


思いがけず真面目なトーンに、笑うのはやめた南科。


が、真顔になると、


「入ったばっかりだよ??出てどこに行けばいいの?」


「そ、そうなんですけど…」


「絢ちゃんは女子寮だから一緒には住めないでしょ?」


一時的に間借りするのも難しい。


家主の都合で強制退去してもらうには、次の住居の確保をしなくてはいけないのか。


「僕がここで蒼真さんと一緒なのが嫌なだけでしょう」


「そんなんじゃないですってば!!」


「子供だましの嘘だ。可愛いね」


わかってもらえなかった…。


返って誤解が深まっただけだ。


……誤解??


もう、何がなんだかわからなくなっていた。



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