管理人は今日も憂鬱(イケメン上司と幽霊住人の皆さん)
「一人では、って??花井さんと出ていくんでしょう…??」
「……花井??何でその名前が出てくるんだ…」
言って、あっとなる。
「……まさか、…見たのか??」
「どういう意味ですか…??昼間、家賃の受け取りに伺ったら花井さん来られてて、来月辺り引っ越すからって言われたんですけど」
「…本人が、そう言ったのか」
こくりと頷く。
「……今しがた、南科さんの部屋にも来られてました、そういえば、開いてたんですかね??ドア」
不思議そうに。
いろいろ動揺しすぎて状況が飲み込めない。
蒼真の彼女がなぜ南科の部屋にいたのか。
蒼真は耳を疑った。まさか。
しかしこの状況で嘘を付いているとも思えない。
というより、絢がこんな真顔で嘘を付くとも、からかうとも考えにくい。
「…ちなみに、どんな女の人だった…??」
「艶々の黒髪の長い、スタイル抜群のすごくきれいな人でした。それがどうかしましたか??」
間違いない。花井だ。
「じゃあ、帰りますね」
なんだろう。
蒼真の顔と声を聞いたこの安心感は。
気持ちが落ち着いてきた。
けれど、代わりに、ぎゅうっ、と胸が締め付けられる感覚に襲われた絢。