管理人は今日も憂鬱(イケメン上司と幽霊住人の皆さん)
出ました
日曜昼間。
ハイツに見学に行った絢。
朝から曇り空で、降る前に行ってみようと思い、自転車で向かった。
隣の市なので何とでもなるかと。電車にすると帰りが面倒そうだ。
前の管理人である父の遺品から、預かっていた契約者の名簿を元に、表札を確かめた。
「あれっ??」
確かに蒼真の名前はあったが、それ以外のほとんどが空き部屋で、半数入っているかどうか、という状況だった。
各階に5部屋、2階建てで計10部屋。
ドアの付近にビニール傘があった。
いるだろうと、1階の2軒目、小さな呼び鈴を鳴らしてみる。
「………はい……」
女性らしい小さな声が帰ってきた。
「あのっ、先日、担当が変わりました管理人の園と申します。ご挨拶に」
「……ああ、伺ってます。今、開けます…」
何ともか細い、聞き取りにくい声だ。
おぎゃあ、と
奥の方で赤ん坊の泣き声がした。
「あっ、すみません。出直します」
「………」