管理人は今日も憂鬱(イケメン上司と幽霊住人の皆さん)
ハイツは
幽霊ハイツが、瞬く間に焼け落ちる。
言っても古い建物だ。
火が回るのも早い。
ベランダから窓ガラスを割ってでも外に出て飛び降りることもできたが、
挟んだ火を跨ぎ、嫌がる真理亜を抱き寄せ、引き摺るようにドアを開けた。
少しすると、誰かが通報してくれたのか、消防車のサイレンが聞こえた。
「ああっ!!」
煤だらけになりながら、転がるように階段を降り、無我夢中で少しでも建物から離れた。
「死なせてくれたらよかったのに!!」
泣き叫ぶ真理亜。
パン!!と頬を叩く。
「死んじゃダメ!!」
死んでしまった人間を助けることはできない。けれど、間に合う命を見捨ててまで逃げることはできなかった。
このハイツに関わった管理人として、人として、助かる命は助けなくては。
「大丈夫ですか!?」
救急隊員が声を掛けた。
ホースの水が降り注がれる。
「…ああ………」
もう力なく経たり混み、燃え盛る炎を眺めることしかできなかった。