管理人は今日も憂鬱(イケメン上司と幽霊住人の皆さん)
もう1軒。
多奈川(タナカワ)、と手書きの名前が貼られていた。
呼び鈴を押してみる。
「新聞??今、忙しいから」
「あっ、いえ、あの、管理人の…」
「ああ、聞いてますよ」
ドアを半分ほど開けて出てきたのは、声と風貌から、40半ばに見える男だった。
昼間だというのにカーテンを閉め、ただでさえ曇り空で薄暗いのに、灯りも点いていない。
外の明かりでぼんやり見えた程度だが、ジャージ姿で、髪はボサボサ。
夜勤かなにかで休んでいた雰囲気だ。それにしては対応が早かったが。
「どうぞ、今、お茶入れますね」
「あっ、いえ、お構い無く、すぐ帰りますので」
歓迎され過ぎても困惑する。