僕は、花本美咲を忘れない
夜道は小さな街灯しかない。

その淡い光は、道をぼんやりと照らしていた。


「ここ。ここが、私の家」


彼女の家は、小さな一軒家だった。


「中、入る?」

「ううん。ここでいい」


彼女は大きな窓から家の中を覗き込む。


彼女の父親と思われる男性、母親だと思われる女性、そして、弟だと思われる少年。

三人は食事中だった。

三人は楽しげに話している。

まるで、元々三人家族だったように。


彼女の席はない。

彼女の食事はない。

箸も、皿も、コップも、何もない。


「みんな、楽しそう」


彼女は笑って言った。
< 17 / 22 >

この作品をシェア

pagetop