僕は、花本美咲を忘れない
それから一週間後。

僕は彼女の家を訪れていた。


インターホンを押して、彼女の声に似た声が聞こえ、ドアが開いた。


「どなたですか?」

「えっと、娘さんの知り合いです」

「娘?...あの、うちには息子しかおりませんが...」


女性は困ったように僕を見る。


「...そうでしたか。それは、すみませんでした」

「いえ...」

「あ、あの」

「なんですか?」

「肉じゃがを、作っていただけませんか?」

「...え?」

「肉抜きの、肉じゃがを、作っていただけませんかね」


明らかに不審な人を見る目で、女性は僕を見た。


「変なヤツですよね、すみません。でも、お願いできませんか?」


女性は「は、はぁ...」と戸惑いながらも、僕を家に入れてくれた。
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