僕は、花本美咲を忘れない
そんな、何気ない日々だった。

代わり映えしない日々だった。


学校へと歩みを進め、声をかけてくる近所の大人達に軽く頭を下げ、学校への道を歩いていた。

ふと前を向くと、一人の女子生徒が歩いている。

僕は彼女を知っていた。

同じクラスの、花本美咲だ。

芸名かと思うその華やかな名前は、僕の知識にすんなりと頼んでもいないのに入っていた。

明るく、マイペースで、いつも笑顔で。

誰もに好かれる性格を持つ彼女は、言わずもがな人気者だ。

どうせ僕の姿を見つければ、声をかけてくるだろう。


「佐崎くん、おはよう」


この道で何度その台詞を、聞き慣れた声で聞いたことだろう。

そう思いながら、僕は足元に視線を落とした。



そして、それは突然のことだった。

大きなものが衝突するような音が、辺りに響き渡った。


僕はびくりと肩を震わせる。


ゆっくりと頭をあげると、目の前の景色に呆然とした。


大型トラックが歩道に乗り上げ、ブロック塀に衝突していたのだ。
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