いるりを見たら思うこと

園内の時計が十二時を回る。

「なにか食べようか?」と提案すると、「あのさ」と、いるりは急にもじもじしだした。

「なに?」

「弁当作って来たけど、食うか?」

「弁当?」

「そうだよ」

「いるりのお母さんが作ったの?」

「んなわけねーだろ。あたしだよ」

「いるりが?」

本気で驚いた。お母さんの手伝いもろくにしたことないとか、料理は苦手だとか、自信満々に言ってたから。

「く……食うか食わないかどっちにすんだよ?」

「毒入り?」

「やっぱいい」と、お弁当の包みをバックの中に押し込めた。

「冗談。食べる」

「笑うなよ」と、念押ししながら、弁当を俺に押し付けた。
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