いるりを見たら思うこと
「取りあえず、いるり」
「あんだよ?」
「今度は一緒に弁当作ってみる?」
「ま……まずかったのか?」
「ううん。面白かった」
「は? 味だよ、味?」
「おにぎりの具とかさ。いつ現れるか分からないから、宝探ししてるみたいで」
「宝探しって、梅としゃけしか入れてねーよ」
「うん。だから、いるりみたいで、飽きない」
「んなことより、うまいって言えよ」
ああ。そうか。彼女の言って欲しいことなんか、わかっているのに、どうしたものか言いたくない。
そういうところ、相性が悪いっていうことかもしれない。
だけど、たぶん、いるりの怒った顔もなんだかんだ好きだったりする。
「もういい! 夜一のくせに!」
だから、今日も少しだけからかってしまうんだ。