いるりを見たら思うこと

「なにしたの?」と訊くと、思った通り「転んだ」と、素直に痛そうな声を出す。

「足、捻ったかもしれないから、今から診てもらう」と、支えられながら、行こうとするけど、「ちょっと待って」と止めてしまった。

「え?」

「俺、付き添うから、どいてもらってもいい?」

「夜一?」

戸惑ういるりなんて、ほったらかしだ。

その腕を離して、代わりに俺の肩にかけさせた。

「ありがと」と、相手に一応の御礼は言うけど、それ以上に、本当は腹がたっていた。

「夜一、どうした?」と、いるりが訊くけど、ちょっと無言になった。

そのまま歩いて、施設内にある救護室に行ったけど、不在だった。
< 34 / 41 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop