HERO

帰りの車で、健は寝てしまい、私も満腹なのと疲れたので、健といっしょにすぅっと眠りそうになりながらも耐えていた。


「…ひとみ、寝ていいよ。着いたら起こすから。」

「うん。大丈夫。」


「…その、さ、大丈夫って言うの、どこまで信用できるんだろ?」

「…え?」

「大丈夫じゃないのに大丈夫って言うの、怖いんだよ。我慢しなくていいんだから。ダメなときはダメって言えよ。甘えていいの!俺には!わかった?!」



…目が覚めた。

涙がどんどん溢れてきた。

健と二人きりの生活。
初めての子育てなのに、パパはいつもいなくて、パパの代わりもしなくちゃ!って力んでた。
相談したくても、相談なんてしたら仕事でたいへんだろうから…って、今までなんとか一人で乗りきってきた。

「大丈夫」ってすぐに言っちゃう自分にも気が付いてた。
「大丈夫じゃない」って思ってた。



藤居くんは気付いてくれてたんだ。


涙が止まらない私を、藤居くんはただ黙って泣かせてくれた。






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