HERO
「今?…今ねぇ…どこだろ…。」

「もぉ… ほんとにわからないの?」

「…うん。ひとみのニオイを嗅ぎ付けながらすすんできたんだけどぉ… わかるわけねぇやな、住所きいてねぇし。でも…

なんか、どぉしても会いたかったんだよ…。だから、走ってるうちに、なんとなく着かないかなぁ、と思って…。」


キュウンとなった。

キュウンどころか、心臓が捩れそうなくらいだった。



「…やだぁ、そんなんで着くわけないじゃあん。
どこ?
どの辺り?
近くに何がある?」

平静を装ってみた…


「…どこって言われてもなぁ…。」


でも…


「私も… 私もすっごく会いたくなっちゃった…。」

思わず言ってしまった。





「……ひとみ。住所は?」
藤居くんの声が、ちょっと低くなった。



「じゅ… 住所は、えっと… 」


住所を伝え、電話を切った。




会いたいって思ってくれたんだ…



会いたい…私も!




待ちきれなくなって、玄関から飛び出した。




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