HERO
「パパはいっつもいないじゃん! うわぁぁぁぁぁん!」


はじめて、健にこんなふうに泣かれてしまった雅史は、まさに絶句…という感じで、ただただ健をみつめていた。

私は、泣き叫ぶ健を雅史から引き離し、抱っこして部屋を出た。

私にだって、何て言ったらいいのか、わからなかった。

健にも…
雅史にも…




健の気持ちも、よぉく分かる。

昨夜、あれだけ喜んでいたんだから、急に「またいなくなる」なんて聞かされたら、ショックは大きいだろう。
さみしいよね…



雅史の気持ちも、分かりたかった。

が、イマイチ、分からなかった。


「仕事なんだからしかたがない。」


そう思っていただろう。

今も、そう思っているだろう。



でも、そう割りきれているのは雅史だけだよ。


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