HERO
「ひとみちゃん…」
困り果てた顔をして、雅史が来た。
「しょうがないよ…。私は健の気持ちもわかる。けど、どうしようもないんでしょ?
まぁくんは…
まぁくんは、私たちと離れて生活することはさみしくないの?
仕事だから仕方がないと思ってるのは、たぶん、まぁくんだけだよ。
私は、「仕方がない」って思ってるけど、割り切れてはない…」
―――言ってしまった…
だから、どうしてほしいとは言えないんだけど、言えるほど、本気で考えたわけでもなかったのだけれど…
「………そっか。」
雅史はそうつぶやいて、ソファーに座った。
「健… ごめんな。でも、今、いってあげないと、本当にみんなが困っちゃうんだよ。パパ、すっごいがんばって、すっごい早く帰ってこれるようにするから…。今夜、電話するから…」
健は私の胸に顔をうずめて雅史の顔は見ないようにしていた。
「…健、ママとまたウカレンジャーみに行こうよ!ウカレンジャーに会えたら、健のさみしいのも、吹っ飛んじゃうかもよ!」
なんとかしたくて、苦し紛れにそんなことを言ってしまった。
「………うん。」
健が小さな声でうなづいた。