びいだま。
ふいに視界が明るくなったかと思うと、
ガードレールの先に2層になった青が見えた。
上の青は空。
下の青は海だ。
そして、近くの看板には剥げかけた塗装で
『この先かんなみさき』とある。
「叔父さん、この辺りなんですか?
...僕が引っ越す家は」
開けていた窓から入って来た風にあおられて、
進行方向とは逆方向に墨を流したように髪がなびく。
「もうすぐだよ。たしか、凪咲くん(なぎさ)の新しい家は...
...あ、ほら見えた。あれだよ、あそこの家」
叔父さんが指さした先には、
思わず顔がひきつってしまうような古ぼけた日本家屋だ。
生粋の日本家屋と言うと少し違和感があるけど。
屋根は当然瓦で
外を見て固まった俺に気づいた叔父さんは、苦笑して言う。
「大きいだろ?...あれ、姉さんが小さい頃過ごした家なんだ」
姉さん...つまり叔父さんは僕のお母さんの弟。
「あれな、うちんちの別荘みたいなもんなんだ。
...本家はもっと無駄に大きいし、無駄に広いから、あれはまだましな方」
「そうなんですか...」
僕のお母さん...叔父さんもなんだけど旧家の出で、
そこから財閥に成り上がった...という、物凄い実家をもってる。