その背中、抱きしめて 【下】



「柚香先輩、1ヶ月ちょっとぶり!これ差し入れ」


清水くんが満面の笑みでペットボトルを私に向かって投げた。

「わっ。ありがと」

キャッチしてお礼を言う。


「清水くん、部活は?」

「珍しく午前だけだったから遊びに来ちゃった」

ずっとニコニコしてる清水くんに向かって、高遠くんは不機嫌に一言


「帰れよ、お前」


といつもよりずっと低い声で言い放った。



「何でアイツあんなに機嫌悪いんですか?」

清水くんが私に耳打ちする。

「そ、それは…」



言えない。

高遠くん、エッチする気満々だったからとか言えない!



「…ただ虫の居所が悪いんだと思うよ。すぐ収まるよ」


嘘&何の根拠もない返事をした。


そして清水くんが床に座ったのを見てから、高遠くんを手招きして隣に呼んだ。

(せめてこのくらいしてあげないとね)

これからって時に邪魔が入った高遠くんは、それはそれは今まで見たことがないくらいの不機嫌さ。

いや、不機嫌っていうより、むしろ怒りに満ちてる。



正直、私はホッとしてるけど…(高遠くんには内緒)。



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