その背中、抱きしめて 【下】
着替えて体育館の前まで行くと、相川くんと桜井くんが不安そうに立っていた。
「相川くん、桜井くん。おはよー」
「あ、ゆず先輩!おはようございます!」
元気のいいあいさつと一緒に新入生らしい不安がこぼれる。
「俺たち、着替えとか…」
「部室案内してあげるよ。おいで」
部室棟の階段を上って男バレの部室のドアをノックする。
ドアが開いて中から顔を出したのは高遠くんだった。
「あ、高遠くん。ちょうどよかった。2人体育館の前でどうしていいか困ってたから連れてきたよ」
「あぁ…」
高遠くんは2人を部室の中に入れて、着替えるように指示した。
そして自分は外に出る。
「着替え終わるまで中にいてあげないの?」
「男の着替えなんて別に見たくないし」
高遠くんが眉間にしわを寄せる。
少し早めに来たかった私に高遠くんも合わせてくれたから、まだ他の部員は誰も来てない。
だから部室の中は相川くんと桜井くんだけ。
(勝手がわからなくて不安になったりしない?)
「今日、先輩あいつらに付きっきり?」
「最初はちょっと教えることがあるけど、経験者だしすぐ練習に合流すると思うよ」
男バレのこと、教えてあげなきゃいけないからね。
これから色々雑用とかしていかないとだから。
「あいつら思ったより先輩になついてるから、あんま優しくしてやんなくていいよ」
(へ?)
高遠くんがちょっと怒った顔で私を見る。