その背中、抱きしめて 【下】
目を離さずに睨みつけたままでいると、彼女…内村さんは涙目になって
「翔センパーイ。あの人、杏奈のこといじめるんですけどー!」
って高遠くんのところに走っていった。
(嘘泣きってバレバレ)
あぁ…たいがい私も性格悪いんだな。
高遠くんが対処する前に、桜井くんが内村さんの腕を引っ張って高遠くんから引き離す。
「お前、高校来てまでいいかげんにしろよ!しかも先輩たちに失礼な態度取って何なんだよ!中学の延長でバカなことすんだったら入部すんな!迷惑だ!」
いつも明るくて笑顔ばっかりの桜井くんが大声で怒鳴った。
更に周りはシーンと静まり返る。
「何よ!杏奈が翔先輩大好きでこの学校にまで来たの知ってるくせに、何でそういう意地悪言うの!?中学じゃそんなに怒んなかったじゃん!」
「意地悪って思うならお前本当のバカだよ!常識なさすぎ!!もうホントうちの部来ないでくれよ!」
桜井くんが興奮してるのがわかる。
これ以上の言い合いは練習に差し支える。
止めに行かなくちゃ。
(…私が発端かもしれない…ごめん桜井くん)
2人の方に向かおうとしたその時。
高遠くんが桜井くんに近づいて、肩をポンと叩いた。