その背中、抱きしめて 【下】



「まぁそんなわけで、翔先輩拉致られました。で、翔先輩の代わりに俺らがゆず先輩を家まで無事にお届けする役を仰せつかったわけです」

相川くんがそう言って私に向かって笑った。


「いや、1人で帰れるから大丈夫だよ。まったく高遠くん、後輩にロクなこと押し付けないんだから」

相川くんも桜井くんも私を送っていく義理なんて全くないんだから、高遠くんの命令でそんなことしてもらうわけにいかないよ。


「ゆず先輩1人で帰らせたら、俺ら翔先輩に殺されますマジで。お願いだから一緒に帰ってください!」

桜井くんが泣きついてくる。

(どんだけ権力はびこらせてるのよ、高遠くん!)


「ゆず先輩、俺らが翔先輩にボコられてもいいんですか?」

相川くんまで子犬みたいな目で!!


「わかった!わかったから!一緒に帰ろう!」

この子たち、年上の手なずけ方を知ってる。

子犬のような小悪魔たちだ。。。



「イケメンコンビ、あんたら明日からは翔くん拉致を阻止しなさいよ?あんなクソガキにベタベタされるのとかマジ無理だから!わかった!?」

目の吊り上がった女バレ2年生たちに囲まれて、相川くんと桜井くんは”はい”って返事した。


(そう返事するしかないよね…)



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