その背中、抱きしめて 【下】
駅まで女バレのみんなと相川くん桜井くんでゾロゾロ集団下校。
駅でみんなとバイバイしてから、イケメンコンビ(笑)と3人で電車に乗り込んだ。
「ごめんね、高遠くん過保護だから暗くなってから私が1人で帰るの嫌がるんだ」
とはいえ、2コ下の子に家まで送ってもらうとか恥ずかしいんですけど。
(1人で帰れるのになぁ、ほんとに)
「それだけ愛されてるってことじゃないですか。最近、通り魔とか変質者とか多いし心配なんですよ」
相川くんが優しく笑う。
「ほんと最近多いよな、通り魔事件。この間、市内でも女の人切り付けられた事件あったもんな」
桜井くんの言う通り、最近このへんでも通り魔事件が多い。
主に若い女の人狙いでカッターとかナイフでいきなり切り付けられたリする。
しかも、駅から家に帰るまでの道で被害に遭うことがほとんどだってニュースで言ってた。
「翔先輩、今日だって自分がゆず先輩を送っていきたかったはずですよ。けど、内村のやつがどうしようもなくて…」
桜井くんが申し訳なさそうに言う。
「2人が送ってくれるの心強いし嬉しいよ。巻き込んじゃってごめんね」
内村さん事件のとばっちりで2人が私を送ることになっちゃって、本当に申し訳ないと思ってるよ。
だから申し訳なさそうにしないで。
高遠くんだって、2人のこと信頼してるから私のことを任せたんだろうから。
「ゆず先輩やさしー」
桜井くんに抱きつかれる。
「ちょ、桜井くん。電車の中っ」
「離れろ、バカっ」
桜井くんは相川くんに引っ張られて私から離れる。
(び、びっくりしたー)
高遠くん以外の男の人に抱きしめられたの初めて。
ビックリして心臓が飛び跳ねた。
「お前、翔先輩に殺されたいの?俺、翔先輩に言っちゃうよ?」
相川くんが桜井くんのほっぺたをつねりながら静かに怒ってる。
「ご、ごめんなさい…言わないで」
「相川くん、大丈夫だから手放してあげて」
涙目になってる桜井くんがかわいそうで、相川くんをなだめた。