その背中、抱きしめて 【下】
地元駅から家まで歩いてる間、高遠くんと内村さんのことが気になってしょうがなかった。
腕組んで歩いてるのかな。
何話してるのかな。
高遠くんの家の前まで行くのかな。
それとも内村さんの家まで送ってあげるのかな。
「翔先輩のこと、やっぱ心配ですか?」
相川くんが心配そうな顔で私の顔を覗き込んだ。
(2人が送ってくれてるのに、私ってば高遠くんのことばっか考えて…)
申し訳なくて猛省した。
「ううん。ごめんね、考え事しちゃって」
年下の子に気を遣わせて情けない。
今は高遠くんのこと忘れなきゃ。
悩むのは家に帰ってから!
「ゆず先輩、そんな強がんなくていいですよ。俺らの前くらい」
「俺ら、ゆず先輩と知り合ってまだちょっとしか経ってないけど、ゆず先輩のこと好きだから。…って、恋愛対象って意味じゃなくてっ」
相川くんと桜井くんが本当に心配してくれてるのがわかる。
それだけで嬉しくて涙が出そうだった。
正直、高遠くんが内村さんと帰ったのはショックだったから。
今まで高遠くんに守られて幸せな思いしてきたから、こういう免疫ないんだ。
初めて、高遠くんを取られる怖さを知った。