その背中、抱きしめて 【下】



「ん、少し腫れ引いたかな。早く支度しな」

お姉ちゃんは私の頭をポンポンって軽く叩いて洗面所から出て行った。


(そういえば最近、高遠くんにポンポンされてないな…)


それどころじゃないのに、そんなことを考えて寂しくなった。




「おはよー、ゆず。って、何その顔」

校門手前で声をかけてきたさくらちゃんが、私の顔を見るなり後ずさりする。

「これでもだいぶ腫れ引いたんですよ…」

お姉ちゃんがやってくれた温冷タオルでほとんど開かなかった目が半分くらい開くようになった。


「昨日のアレで泣いてたの?」

「や、私の気の持ちようなんだろうけどね…こういうことに免疫なくてね」


「あ…」


私の話を聞いてくれてたさくらちゃんが前を向いて固まる。

「…どうしたの?」

さくらちゃんの目線の先を追いかけると、さくらちゃんが手で私の視界を塞いだ。

「見ちゃダメ!」



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