その背中、抱きしめて 【下】



「ゆず先輩、思い出しちゃダメだ」


相川くんが駆け寄ってきて、片手で私の目を覆う。


「何も考えないで。もうちょっとゆっくり休みましょう」


目を隠されたまま頭をそっと撫でられる。


それが心地よくて、すーっと意識が遠のいた。






どれくらい時間がたったんだろう。


遠くで話し声が聞こえる。


でも何を話してるかわかんない。


男の声なのかも女の声なのかもわかんない。



重たいまぶたは自分の意思では持ち上がらなくて


でも誰かが近づいてきた気配は感じる。



(誰…?)




頭を撫でられる感触。



「…たか…とーくん…?」



重いまぶたを何とか開けようと力を入れる。


うっすら開いた目にはぼやけた視界。



目の前にある人影は、高遠くんに見えるけど…



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